08年の白馬山麓「のっぺ山荘」での
アサギマダラのマーキングの3日目でした。
SRS17270からSRS17456までの
187頭を標識することができました。
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[080914] 長野県大町市平 中綱湖畔 「のっぺ山荘」。
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■長野県の「のっぺ山荘」では例年9月中旬から下旬にかけて、
フジバカマ園にて、多くのアサギマダラが
しばらく時を過ごして南への旅を続けていきます。
■9月14日は、雲は若干多いものの、朝から晴れでした。
アサギマダラはやはり多いとは言えず、
この日は、のっぺ山荘の近くの中綱湖畔のフジバカマ群落や、
近くの鹿島槍スキー場の裾のフジバカマ群落を巡回しながら
標識個体数を確保しました。
■本日の雲では「むくむくと立ち上がって消える」という
夏雲の特徴を残しているものが見られました。
■本日のトピックスは、自己再捕獲例があったことです。
福島県グランデコで9月2日に筆者が標識して放蝶した
「SRS14318 デコ 9/2」を、14時55分に
鹿島槍スキー場の裾で再捕獲したことです
(SRS17438 NP 9/14)。
12日かけて、南西方向に237kmを移動したことになります。
グランデコでの移動は遅れる傾向がありましたが、
例年アサギマダラが多く見られる9月半ばに
几帳面に移動して来た個体があることは、
アサギマダラという生き物の底知れない「すごさ」を示しています。
■朝の早目の時間帯にはやはり
白いタオルを回すことで寄って来る個体が多く、
タオルキャッチで捕獲した例が前日同様10例以上ありました。
■本日標識した187頭のうち雌は5頭で、比率は2.7%。
3日を通して、2~3%の範囲にあることが分かります。
過去2日の雌は未交尾でしたが、
本日は交尾を済ませた個体が2頭ありました。
SRS17315は交尾済みですが、腹部の硬結はなし。
SRS17347は交尾済みで、腹部の硬結がありました。
これは産卵可能な状態と言えます。
■病気の個体はありませんでした。
■「中古」個体は3例ありました。
SRS17286♂、17287♂、17370♂です。
「古」個体は0例でした。
「中古」「古」を合わせると3例で、これは
187例のうちの1.6%です。
■ヘアペンシルを出した♂個体は1頭ありました。
SRS17286がそれで、
多くの場合にそうであるように、
左側だけを出したものです。
この個体は、中古個体でもありました。
■翅に変形のある個体は2頭(1.1%)で、
SRS17416♂と17443♂です。
■上記の187例とは別に、一度放蝶して、
再度捕獲した個体はのべ19例ありました。
■筆者以外の人が放蝶した個体の再捕獲はありませんでした。
■白い部分が多い個体(白い部分の斑紋模様が派手に見える個体)
は記録されませんでした。
■鱗粉のある場所の全体が普通より黒っぽい個体(黒化個体)は、
2例記録されました(SRS17338♂、17436♂)。
■小さい個体は4頭記録しました(2.2%)。
SRS17425♂、17431♂、17437♂、17452♂。
(小さい個体とは、油性ペン「マッキー」の
キャップの長さよりも前翅長が短い個体のこと)。
■標識中に筆者やネットに寄って来た個体(ストーカーと呼びます)
は2例ありました。1例はSRS17398を標識中に
左手の甲に止まった個体で、写真があります。
もう一例は、16:00頃に、鹿島槍スキー場で標識中に
周囲を飛び回っていました(捕獲せず)。
■前日(9月13日)に標識した93頭の個体の中で、
本日再捕獲した個体は15頭ありました。これから、
フジバカマ園を含むエリアにいるアサギマダラの個体数は
93×187/15=1159頭
と推測されました。この値は前日の600頭余より増えています。
■過去2日間のデータをまとめて推定すると、
過去2日間の標識数は219頭でした。
9月12日の標識のある個体の本日の再捕獲は10頭、
9月13日の標識のある個体の本日の再捕獲は15頭でした。
これらを合わせた数字25を用いると、
219×187/25=1638頭
という推定値が得られます。
この方法は、滞在場所では有効ですが、
のっぺ山荘のように明らかに中継地である場所では
有効ではありませんので、あくまで参考値としてください。
■本日は、のっぺ山荘のフジバカマ園では単発個体は見ましたが、
アサギマダラが「群れ飛ぶ」ことはほとんどありませんでした。
鹿島槍スキー場の裾や、中綱湖畔のフジバカマの群落では、
「群れ飛ぶ」ことはないものの、個体数はフジバカマ園より
多い時間帯がありました。
■この日、天気がよかったので、どのフジバカマ群落でも、
ヒョウモンチョウの仲間が多く飛び回っていました。
他にキチョウやクジャクチョウも見ました(撮影あり)。
アサギマダラについても接近して撮影した個体があります
(SRS12401♂など)。
■周囲の草むらでは終日、キリギリスやクサヒバリなどの秋の虫が
しきりに鳴き続けていました。
湖畔ではハグロトンボの仲間を見ました。
■また本日は、温度が(手持ちの温度計で)30度を超えることがあり、
そんなときには、アブラゼミや他の種類のセミが鳴いていました。
秋の虫と夏の虫が一緒に鳴くのを聴くのはちょっと不思議な印象です。
■例年のようなアサギマダラの大きな群れの移動は
まだ見られませんが(これは標識中に筆者に話かけてくる
地元の方々の実感でもあります)、
「福島県グランデコで放蝶した個体を自己再捕獲できた」
事実から考えると、めりはりのある移動の波は見られないが、
ピークを伴わない「そこはかとない移動(だらだらした移動)」
が起きている可能性もあります。
■この地で複数の方々から得た情報を総合すると、
2008年の夏に関しては、
標高の高い山でのアサギマダラの目撃例では
例年より個体数が少ないという印象を受けたようです。
福島県のグランデコでは昨年より多い個体数なので、
東北と中部地方とでは発生した個体数に
違いがあるのかもしれません。
■本日は小さい移動がよく観察されました。
1)鹿島槍スキーで9月12日に標識した個体SRS17305を
のっぺ山荘で9月14日に再捕獲しました。
この個体は鹿島槍スキー場からのっぺ山荘に
短距離移動したのです。
2)逆にSRS17313は、9月14日の間に、
のっぺ山荘で標識放蝶され、鹿島槍スキー場で再捕獲されました。
すなわち、のっぺ山荘から鹿島槍スキー場に
同日に移動したのです。
3)SRS17325は9月12日にのっぺ山荘で標識しました。
それを9月14日に中綱湖畔のフジバカマ群落で再捕獲しました。
すなわち、のっぺ山荘から中綱湖畔まで同日に移動したのです。
4)SRS17318は中綱湖畔で標識され、1時間以内に
のっぺ山荘で再捕獲されました(SRS17367の前)。
すなわち、中綱湖畔からのっぺ山荘まで短時間で移動した
ことが示されました。
以上から、かなりの地域内移動が生じていることが分かります。
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■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP
<参考HP>
●グランデコ・デコ平・裏磐梯でのアサギマダラ・自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
●2008年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
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