これは『グランデコ→蔵王』という移動の2007年における第3例目になります。
07年の8月25日の14時20分に、福島県耶麻郡北塩原村のグランデコスキー場で、アサギマダラにSRS7212と標識をして放蝶しました。標識者は栗田昌裕。
その蝶は、それから10日後の9月4日に、山形県蔵王山で、伊藤聖子さんによって再捕獲されました。
移動距離は約55km。移動方向は北東です。
■下に示したのがSRS7212の放蝶時の画像です。翅の表面にむらがあり、新鮮と言えない雄個体です。このようなむらは強い雨が降った後でみかけることが多く、雨滴の強い衝撃に一晩耐えた、といったような出来事で生ずるものではないかと想像しています。
腹部は正常の太さ。翅の縁の白毛は10段階のうちの4くらいの残存レベルです。
■通常の年には、8月下旬には南下の旅が始まりますから、蔵王からグランデコへの移動個体がみつかるのが普通なのに、本例は、その時期に「北上」しているという点で異例です。昨年の蔵王からグランデコへの2つの移動例に関しては、下記の「2006年アサギマダラ移動調査記録(SRS)」をクリックして表の記載を御覧ください。
しかし、この異例さは、本例だけの異常さを示すのではなく、07年の夏の気象上の異例さによる集団の挙動の異例さを表しているのではないかと思っています。07年夏のグランデコのアサギマダラの動きには、過去3年とは全く異なったパターンが見られました。
■その具体的な現れとして、07年の東北地方からの南下移動の旅は、例年よりかなり遅れていくのではないかと思います。今後のデータでそれを示唆してくれるようなものが出てくるかもしれません。
■その後、以下の報告をアサギMLに出しましたので、付加しておきます:
[asagi:011779] 【移動情報】 グランデコスキー場 8/25 → 山形県蔵王山 9/4 (SRS7212→ ・) ♂ 山形県第1例
●[asaginet:4073]をもとにして、グランデコから山形蔵王への移動を示します
(2007年の山形県への第1例&唯一例)。
●移動情報
グランデコスキー場 8/25 → 山形県蔵王山 9/4
(東北方向に約55km移動。移動日数は10日間)
標 識:SRS 7212 デコ 8/25
性 別:♂
標識日:2007年8月25日14時19分
標識地:福島県耶麻郡北塩原村桧原荒砂沢山 グランデコスキー場
標識者:栗田昌裕
備 考 :ヨツバヒヨドリにて吸蜜。写真あり。破損なし。鮮度中の下。
辺縁白毛 4割残存。腹部横径 正常上限。
↓
再捕獲日:2007年9月4日
再捕獲地:山形県山形市蔵王山
再捕獲者:伊藤聖子
●コメント
1)07年の夏のグランデコでのアサギマダラの挙動は
異例づくめでした。本例も、本来なら、蔵王→グランデコ
という方向が自然な時期なのに、むしろ逆行しています。
しかし、一ヶ月間ゲレンデを眺め続けた目で見ると、
「なるほど!」という感想です。
30度を超す真夏日の福島県のゲレンデから、さらに北上
していった状況が目に見えるようです。

[070825]福島県耶麻郡北塩原村桧原荒砂沢山 グランデコスキー場(グランデコスノーリゾート)。デコ平。ゴンドラ駅。標高1390m。
■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP
<参考HP>
●グランデコ・デコ平・裏磐梯でのアサギマダラ・自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
●2007年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
●2006年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
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