アサギマダラのマーキングの13日目でした。
この日はSRS7616からSRS8206までの
591頭にマーキングをしました。
写真上はその途中で標識したSRS8200の画像です。

[080818] 福島県耶麻郡北塩原村桧原荒砂沢山 グランデコスキー場。デコ平。
■4日間連続して雨が降った次の日、
8月18日はよい天気が予測されていました。
ゴンドラ駅での気温は午前9時に
16度Cと信じられないほどの低値(今夏の最低)でした。
しかし、体感としては爽やさを感じました。
ゲレンデに出て見ると、まもまくアサギマダラを次々と見ることができました。
手持ちの温度計では21.5度C。こちらの値の方が、
ゲレンデの実際に近い値なのでしょう。
数日来見ることができないほどの多くのアサギマダラに
ところをさほど選ばないで出会うことができました。
その結果、今回のマーキングの最高頭数である591頭に標識できました。
■グランデコのスタッフが行うアサギマダラ観察会でも、
多くの個体に標識が出来たようです。
■この日は相対的に標高の低いところと高いところの両方で標識をしました。
■雌は95頭で、割合は約16%。雌比率は
15%、15%、23%、16%、24%、
24%、8%、6%、7%、17%と推移してきました。
■交尾痕のある雌個体は1頭(SRS7906)で、やや古い個体でした。
■ヘアペンシルの出た雄個体は1頭(SRS7649)。
左側のみの例です。今年の夏に見ているヘアペンシル例は
すべて片側だけ出ています。
■翅の変形は7例(SRS7689、7810、7893、7913、
8021、8025、8197)。割合は1.2%。
■「中古の個体」は4例(SRS7739、7877、
7937、7975)。
「古い個体」は2例(SRS7635、7960)の2例。
合わせて6例となり、その割合は1.0%です。
■「病気」と思われる個体は1例(SRS8015♀)でした。
これは尾端に病変があり、変色が見られました。
■591例のうち、前日8月16日の標識のある個体の再捕獲は3例。
前日は30例しか標識しませんでしたから、この小さい値を用いて
確率的な推定するのはあまり意味がありませんが、形式的に推定すると、
591×30/3=5910値となります。
以下に、より意味のあると思われる推定をしておきましょう。
■標識日を日付順にA、B、C、・・・とすると、各日の分の再捕獲は
A2、B6、C8、D11、E6、F12、
G8、H6、I1、J6、K4、L3
となり、その合計は73例です。
筆者の標識した個体は全部で4880例ですから、推定値は
4880×591/73=39508(頭)
となります。すなわち、
8月15日(=前日)には約4万頭程度のアサギマダラが
「ゲレンデ周辺(見えないところも含めた仮想領域)」にいたと推定されます。
8月16日の再捕獲による8月15日の推定値も
約4万頭でしたから、
今日の推定値49508頭という値もほぼ事実に対応すると思われます。
■筆者以外の人が標識した個体の再捕獲は15例でした。
筆者の標識結果との比率で見ると、
4880×15/73=1003
すなわち、約1000例くらいは観察会その他で
標識された可能性があります。
■なお、当日、筆者が放蝶して、自己再捕獲をした例は5例です。
この値も、当日の個体数を把握する上で役立つと考えて、
毎日記録しています(議論の詳細は省略)。
■白い部分が多い個体(白い部分の斑紋模様が派手に見える個体)
は増えたままなので、記録は特に取っていません(今後も)。
■鱗粉のある場所の全体が普通より黒っぽい個体は
SRS7632、7988、8024、8032、8098が
目立ちました(他にもあり)。
いずれにしても黒っぽい個体は増えつつあります。
これは翅色が羽化する時期に依存するのか、
あるいは羽化する場所に依存するのか、興味が持たれます。
前者ではないかという気がしています。
すなわち、羽化する時期が夏の終わりに近づくほど、
羽色が黒くなるのではないか、というのが筆者の仮説です。
■8月17日(昨日)には、手持ちの温度計で20~21度、
ゴンドラ駅の温度計では18度という温度で、
日差しがあり、風もなく、夕方でもない条件下で、
アサギマダラがまったく見られなくなり、
大変不思議に思ったのですが、
8月18の9時頃にはそれと大差のない9時頃の条件で
大変多くのアサギマダラが見られました。
やはりアサギマダラには月並みのデータでは理解しがたい
「本当に本当に不思議」な性質があると思われます。
前日は、今夏の最低の標識頭数でしたが、
本日は、今夏の最高の標識頭数となりました。
■再捕獲例がありました。
「あだたら HK 65 8/14」という♂個体です。
これは「SRS8199 デコ 8/18」と標識して放蝶しました。
同じ標識者の個体を捕獲するのは今年の夏で3例目です。
第一例、第二例は、以下の通りです。
「あだたらHK21 8/2」(SRS4849 デコ 8/9)
「あだたらHK52 8/2」(SRS5473 デコ 8/11)
以上の3例は、安達太良山から約20km離れた
グランデコのスキー場に着実に飛来してくる個体がある
ことを証明しています。
■雌の比率については、現在、2つの作業仮説を持っています。
第一仮説は、「天候不良の日は雌比率が下がる」こと、
第二仮説は、「標高の低い方が雌比率が下がる」ことです。
このうち、第二に関して、本日検討した結果を示します。
検討(1)「ゲレンデAの標識の高めのエリアで標識した結果」は
72頭のうち17頭が雌で、雌比率は23.6%でした。
検討(2)「ゲレンデAの標識の低めのエリアで標識した結果」は
113頭のうちの20頭が雌で、雌比率は17.7%でした。
検討(3)「ゲレンデBの標識の低めのエリアで標識した結果」は
406頭のうち、58頭で、14.3%でした。
検討(1)と検討(3)を合わせると、
2箇所の標高の低めのゲレンデで調べた結果は、
519頭のうち78例で、15%でした。
以上から、標高が低めのエリアでは15%、高めのエリアでは23.6%
とまとめることができ、第二仮説を支持する結果が得られました。
この結果は統計的にも有意になっていることでしょう。
この現象に関してはさらにデータを増やして調べていく予定です。
■5日ぶりのこの日は、青空に次々と素晴らしい雲が展開して、
心をのびのびさせてくれました。
例年、グランデコの空にはとても美しい巻雲が出るのですが、
この日が本格的に巻き雲が出る最初の日になりました。
(最初に巻き雲を見たのは雨の降り始めの日でした)。
8月の上旬は上昇気流によってもくもくと立ち上がる
「楽しい雲の遊び」を眺めて楽しむことができるのですが、
8月の半ばすぎには秋の気配を感じさせる高い雲の展開を
見ることができるようになります。
雲の舞台の標高が低いレベルから、
高いレベルに移行したのです。
舞台が上がると、淡い雲が羽衣のように美しく優雅に展開して、
心を高揚させてくれます。
この日はその中でもおぼろ状態になった群雲が特に印象に残りました。
■陸地の舞台だけでなく、
空の舞台も日々季節の変化を教えてくれるのです。
人間は立ち止まることがあっても、
季節は決して立ち止まることなく
日々の歩みを進めていきます。
■アサギマダラはそのような舞台の変化に鋭敏に反応して
集団の挙動を変化させて行きます。
■私はアサギマダラの行動を読むためには
「地水火風空人物命」をとらえることが重要と考えていますが、
雲は「水」をその本態とし、「火(熱エネルギー)」によって生成され、
「風」によって駆動され、「空」を舞台とする重要な自然界の要素であり、
アサギマダラを「読む」ためには「雲を読む」ことが重要です。
雲の変化とともにアサギマダラの行動も変化していきます。
■明日、8月19日は再度、終日雨天の予想です。
再び、標識頭数は減ることでしょう。
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■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP
<参考HP>
●グランデコ・デコ平・裏磐梯でのアサギマダラ・自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
●2008年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
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