アサギマダラのマーキングの20日目でした。
過去2日間は雨天続きで、過去5年間を通じて初めて、
1頭も標識できない日となりましたが、
今日は曇り空の一日でSRS8887からSRS9285までの
399頭を標識することができました。
■下は、途中のSRS9200の画像です。

[080825] 福島県耶麻郡北塩原村桧原荒砂沢山 グランデコスキー場。デコ平。
■本日は、「4日連続の雨→好天の1日→雨の日→ほどほどの日→4日連続」、
と続いて、やっと雨降りでない日となりました。
地域の天気予報では、午前30%→午後30%→夜20%
という降雨確率で、夕方18時までは雨傘マークがついていました。
(平地の)予想気温は19度Cと前日同様低値でした。
しかし、結果として振り返ると、
まるで梅雨時のように続いた雨の日が、
やっと小休止を迎えた感じの一日でした。
■8時30分の最初のゴンドラでゲレンデに上がると、
ゴンドラ駅の気温は15.5度C。
前日より若干上がりましたが、
アサギマダラが動ける温度ではありません。
■ゴンドラから下を眺めると、
数々の植物が秋に向かって変色の歩みを進めていました。
ウダイカンバの大きめの葉は黄色みを帯び、
一部のカエデの葉は変縁が紅がかっています。
ナナカマドの実もオレンジから赤へと移行しつつあります。
■西大巓は終日雲が立ちこめ、
ゲレンデも終日曇りといってよい状態でしたが、
午後になって雲の一部に青空が見えました。
■ゲレンデには長い雨が一段落したからか、
温度は低めでしたが、アサギマダラが姿を現していました。
まだ、雨で傷んだヨツバヒヨドリの花は
完全にはもとのようなふっくらした雰囲気には戻っていませんが、
「おなかをすかしたアサギマダラ」がそこそこで吸蜜をしていました。
おそらく、この程度の曇り日がもう一度続けば、
ゲレンデはもとの賑わいを取り戻すことでしょう。
■この日は標高の低めのところで標識をしました。
■本日標識した399頭のうち雌は28頭で、比率は7.0%。
雌比率の低い日でした。
これまでは雌比率は標識頭数の少ない日は信頼姓がないので除くと、
15%、15%、23%、16%、24%、
24%、8%、6%、7%、17%、7%などと推移してきました。
■交尾痕のある雌個体はなし。
■ヘアペンシルの出た雄個体もなし。
■翅の変形は1例のみ(SRS063♂)。
割合は0.25%で、少ない方です。
■モンシロチョウ程度の小さい個体が多い傾向は続いています。
■「中古の個体」は2例(SRS9058♂、9203♂)。
「古い個体」は0例。
合わせて2例となり、その割合は0.5%と低い値です。
■「病気」と思われる個体は1例(SRS8909♂)でした。
病気とは言えないかもしれませんが、
テントウムシの幼虫に形が似た虫が
腹部にはりついていて離れない例が一例ありました(SRS9064)。
ダニの仲間が腹部や翅についているのは時々見ますが、
それとは異なります。
■本日の399例のうち、自己再捕獲で個体数推定に使う意味があるのは
8月20日の個体の再捕獲例です(なぜなら、
8月21日は1頭、23日と24日は0頭しか標識しておらず、
22日は76頭標識しましたが、その再捕獲は本日はないからです。)
8月20日の標識のある個体の再捕獲は6例でした。
その日は589例に標識をしましたから、
589×399/6=39168頭(=約4万頭余)となります。
ただし、これは5日も前の個体を論じていますから、
参考にはなりますが、信頼姓は高くありません。
以下に、より意味のあると思われる推定をしておきましょう。
■標識日を日付順にA、B、C、・・・とすると、各日の分の再捕獲は
A0、B4、C1、D2、E2、F4、G2、H4、I0、
J3、K2、L1、M11、N0、O6、P0、Q0、R0
となり、その合計は
0+4+1+2+2+4+2+4+0
+3+2+1+11+0+6+0+0+0
=19+23=42例です。
筆者の標識した個体は累積で昨日までに5560例ですから、推定値は
5560×399/42=52860(頭)[=約5万頭]
となります。すなわち、
前日までには約5万頭程度のアサギマダラが
「ゲレンデ周辺(見えないところも含めた仮想領域)」にいたと推定されます。
8月18日の推定の計算結果は約4万頭で、
8月20日の推定の計算結果は約6万頭でしたので、
今回の約5万頭という推定からは、8月20日頃からは、
個体数は4~6万頭程度で、特に増えてはいないことを示唆しています。
■当日筆者が放蝶した個体の自己再捕獲は3頭でした。
これが少ないことも、全体の個体数の多さを示唆しています。
■筆者以外の人が標識した個体の再捕獲は16例でした。
■白い部分が多い個体(白い部分の斑紋模様が派手に見える個体)
は増えたままで著変なし。例としては、SRS9275など。
■鱗粉のある場所の全体が普通より黒っぽい個体の例は、
SRS8887、9069(典型)、9158、9163、
9209などで、いずれも♂です。
■標識中に筆者やネットに寄って来た個体は、以下の通り。
ネットに止まったのはSRS8903(画像あり)。
筆者のワイシャツに止まったのはSRS8907(画像あり)。
いずれも手づかみでつかめて、標識ができました。
画像とは、止まっているときの画像です。
8月の下旬になると、
このような「好奇心に満ちた」個体が次第に増えてきます。
これはグランデコに滞在するアサギマダラたちが、
成熟しつつある兆しのひとつと考えています。
■上記の推定頭数は、雨の期間中の推定から特に増えてはいません。
これはまだ南下移動が始まっていないことを示唆します。
というのは、南下が始まると、
蔵王などのより北部から移動して来るアサギマダラで
ゲレンデは賑わいを見せ、頭数が一時的に増加するからです。
例年では24日くらいから移動の兆し見られ、
蔵王マークなどが再捕獲されるものですが、
2008年は8月25日になってもまだ移動の気配は
感じられません。
雨が続いて、例年より移動が遅れていると思われます。
■撮影隊の方々は、本日までおられましたが、
ゲレンデを撮影した後に東京に戻られました。
■今日は、イチモンジセセリをこのゲレンデで初めてみました。
過去にも見たことはありませんでした。
■コシアブラという樹木の花で吸蜜している姿を見ました。
23日には、雨が降っている最中のゲレンデでは、
ヨツバヒヨドリの花で吸蜜しているアサギマダラは
見られませんでした。しかし、森の中の、
コシアブラとカエデとブナを含む樹木の梢で、
20頭くらいのアサギマダラが飛んでいるのを見ることが
できました。すべてがコシアブラで吸蜜しているとは
言えませんが、そのうちの南頭かは、コシアブラで吸蜜
していると見えました。
■下山はかなり遅い時間帯になりましたが、
深い闇の中の道を歩いていてふと見上げると、
雲の一部が切れて、星が姿を現していました。
10日ぶりに星空を見ることができました。
ホテルに到着するこころには、空の一角のみではありましたが、
グランデコの夜は天気がよければこんなに星が数多く見えるのだ、
と改めて感動するほどの星が見えていました。
落ち込んだ気分に少し光りがさしてきた一日でした。
■明日の8月26日(火曜日)の天気予報はやはり「終日雨傘マーク」です。
地域の降雨確率は20%となっています。
確率は本日の予報よりは低い値ですから、
明日も恵まれる可能性があります。
テレビではグランデコのある福島県の「中通り」地域の降雨確率は
午前60%-午後60%-夜60%とのこと。
北海道に高血圧が陣取り、
その南には低気圧があって動かす、
その影響で雨の多い日々になっているとの説明でした。
■ホテルに戻ったところ、NHK総合テレビのMさんから、
取材電話が入りました。
6時10分からのニュースで、季節便りとして、
グランデコでのアサギマダラの話題を採り上げたいとのこと。
30分ほどお話をしました。放映日は未定とのことでした。
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■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP
<参考HP>
●グランデコ・デコ平・裏磐梯でのアサギマダラ・自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
●2008年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
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