■アサギマダラは、日本列島の本州と南西~八重山諸島の間を、春の季節には南から北に飛び、秋には北から南に移動すると考えられています。
■秋の移動は、本州からの多数のマークされた蝶が南の離島で再捕獲され、確認されてきました。しかし、春に『日本の南の離島から本州まで飛んだ実例』はこの年まで知られていませんでした。筆者が奄美で5月6日に標識したSRS-525は、5月17日に兵庫県三木市で捕獲され、その記念すべき第一例目となり、本例はその第二例目となりました。
以下、アサギマダラのメーリングリストの筆者の記事から引用します。
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■Sent: Monday, July 05, 2004 3:40 AM
[asagi:007156] 移動情報:喜界島滝川林道 5 月 5 日→長野県下伊那郡茶臼山 7 月 4 日
● 伊豫田さん、asagiMLの皆さん、東京の栗田昌裕です。
1● 伊豫田さんからの御報告:
[asagi:007155] SRSを再捕獲しました。
は、大変にうれしい驚きの「ビッグ・ビッグ・ニュース」でした。
● 喜界島から本州への北上が確認された
初めての例なのではないかと思いながら、以下を報告させていただきます。
●[移動情報]
標識 :SRS463 キカイ 5/5タ
捕獲地 :鹿児島県喜界島滝川林道
北緯:28度18分42秒 東経:129度58分46秒
捕獲日時 :2004年5月5日 13時16分
天気、気温:曇り(1時間後に雨)、25~26度。
性別、鮮度: ♂。新鮮。破損なし。汚れもなし。
捕獲者 :栗田昌裕
捕獲状況 :滝川林道のヤマヒヨドリバナを刈った後の
路傍を飛翔中の個体を採集。
付記 :デジカメ画像あり。
「5/5タ」のタは滝川林道を示す記号。
↓
再捕獲地 :長野県下伊那郡根羽村茶臼山(標高1310m)
北緯:35度13分49秒 東経:137度39分20秒
再捕獲日時:2004年7月4日 8時25分
天気、気温:曇り、24℃
鮮度 : O 破損有り。キカイの記載に汚れあり。
再捕獲者 :伊豫田 壽男
捕獲状況 :斜面にあるヨツバヒヨドリの周りを飛翔中
● 備考:北東へ 移動距離 約1057km。移動日数 60日間。
3● この個体に関しては、喜界島で撮影したデジカメ画像が17
枚あります。ご希望の方にはメールにて、そのうちの一枚をお送
りします(ただし、圧縮します)。
伊豫田さんが、左側の写真を掲載しておられますので、左側裏
面の画像を送ります。
伊豫田さんの撮影された下記の画像([asagi:007155] :下記URL
http://jp.y42.briefcase.yahoo.co.jp/bc/aichiasagi/vwp2?.tok=bcegyDBBDgHXZawL&.dir=/%a5%de%a5%a4%a5%c9%a5%ad%a5%e5%a5%e1%a5%f3%a5%c8&.dnm=%a3%d3%a3%d2%a3%d3463.jpg&.src=bc
)
を拝見すると、左右に前翅に対になった小破損があり、
左後翅に2個の小破損があり、さらに、左前翅裏に「キカイ」
に重なる黄色い汚染(シミ)があるように見えます。
これらは、喜界島での画像には認められないものなので、
60日間、1000キロ余の旅の途上で生じた出来事による
ものと考えられます。アサギマダラの長い道中の「艱難辛苦?」
を想像すると感慨深いものがあります(どこかで4号や6号の
台風に巻き込まれた可能性も否定できない??
参考:[asagi:007133] Re: 台風に関する補足など
6月末の奄美大島にはまだアサギマダラがいた! )。
4● 去る5月には、奄美大島から兵庫県への移動例SRS525
(参考 [asagi:007017] 移動情報:
奄美大島住用村三太郎峠 5/6→兵庫県三木市 5/17)
を体験させていただきましたが、今回の喜界島からの例とは、
何と「出発日がわずか一日違い」であることが注目に値します!!
5月1日から5月5日までは喜界島でマーキングをしましたが、
その最後の5日の午後13時過ぎ、滝川林道でSRS463
にマーキングを施しました。次いで、その日の夕方に奄美大島に
渡り、翌5月6日の夕方16時49分に住用村でSRS525に
マーキングをしたのでした。
この両者がいずれも本州で発見されたということに、
単なる偶然以上のものを感ずるのは私だけでしょうか。
明確な根拠はありませんが、両者は、ほぼ同緯度にある互いに
25キロしか離れていない2つの島から、ほぼ同時期に北上を開始
したのではないか、という気がしてなりません。
5● 喜界島では5月1日~5日に228頭にマーキングしました
(SRS248~475)。
奄美大島では4月29、30日に94頭(SRS154~247)、
さらに、5月6~10日には161頭(SRS476~636)に
マーキングしました。
これらの合計483個体から、2頭の北上個体が出たことになり
ます。この事実から、これまで「喜界島の蝶はいったいどこにいく
のだろうか」と大変不思議に思っていた疑問に解明の光が差して
来たように感じています。
喜界島からいなくなった個体は、やはりこれまでも(全部とは
言えないまでも)北上していたのではないでしょうか(早急に
結論に飛びつきすぎているのかもしれませんが)。
実は、これまでは、「喜界島発のアサギマダラは、何か特殊事情
があって、発見されないのではないか」とも考えていたのですが、
その考えが少し変わりました。
過去に発見されなかった理由の解釈として、「北上個体は、
本州を含む広い面積を持つ地域に拡散してしまう」ために、
「『確率が小さい』という単にそれだけの理由で発見されなかった
のではないか」と素直に理解する方向に傾いてきました。
今回、伊豫田さんのように本当に熱心な方のおかげで(何しろ
8時25分という早い時間帯に捕獲されている!)、闇の領域
に一条の光が差してきたのは、極めて示唆的であると受け止めて
います。私も少し長い時間を割いて喜界島と奄美に滞在した甲
斐がありました。
伊豫田さん、本当にありがとうございました。
6● 喜界島からは、他にも福島さんや濱川孝久さんの「キカイ」
マークの蝶が合計2462頭(=2001+461)も飛び立って
いるとのことですから、asagiMLの皆さん、引き続きよろしくお願
いします。
2004年が、マーキングとその再捕獲を通じてアサギの動向
を知る上で、大きな「当たり年」になるといいですね。
以上、栗田昌裕
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■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
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■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP[SRS速読法・SRS能力開発法指導]
<参考HP>
●2008年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
●2004年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
●長野県の自然旅行体験
●喜界島の自然旅行体験(SRS研究所)
●奄美大島の自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
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