08年8月26日に、アサギマダラの22日目のマーキング調査をしました。
■今日も日本列島は高気圧に覆われており、福島県も終日晴れでした。
前日より1-2度気温は上がりましたが、冷夏であることは相変わらず。
グランデコも朝は15度で、16時は18.5度と終日涼しく,
時に肌寒い気温でした。日当たりがよいときは22度を記録しました。
温度は一時的に上がりましたが、大きな雲に覆われていた時間は温度が下がり、
アサギマダラも姿を消しがちでしたので、結局、
前日よりアサギマダラの活動は少なく、姿を見せても、落ち着かず、
近づくとすぐ逃げてしまう状況でした。
■グランデコでは夏雲は上昇気流で山の周囲に立ち上がる雲で、
秋の雲は遙かに高いエリアに流れる巻き雲が特徴です。
今年はやっとここ数日、立ち上がる雲が観察できるようになりました。
例年は巻き雲も見えてよい時期ですが、
典型的なものはまだ一度も見ていない状況です。
■全国的にも、今年はエルニーニョの年で、異常な気候が続いていますが、
グランデコの気候も2004年以来、初めての状況を体験しています。
9月上旬には、再度温かい時期が来ると言われていますが、
アサギマダラの旅立ちはそれ以後になるのではないかと推定しています。
というのは、例年見られる成熟の兆候がまだ希薄だからです。
(成熟の兆候は、アサギマダラの独特の行動パターンに見られます)。
人間で言えば、グランデコのアサギマダラは
まだ高校2年生程度ではないでしょうか。
■アキアカネ(=赤蜻蛉の一種)は少なく、
しかし、ときに、若干成熟した美しい赤色を発色している個体がいます。
ウラギンヒョウモン、クジャクチョウ、ミヤマカラスアゲハを見ました。
今年初めてキベリタテハをホテルの近くで見て、撮影できました。
■アサギマダラはSRS6944-7348の405頭に標識をしました。
グランデコで筆者が標識した個体は総計5876頭となりました。
活動時間帯が狭くなっており、10時以後から14時30分の間に
若干多くのアサギマダラに出会えますが、あとはほとんど見ない状況です。
過去には17時でもかなりのアサギマダラに出会えましたので、
信じられない思いで2008年の夏を体験しています。
■雌は38頭で、割合は約9.4%でした(すべて未交尾)。
前日に著明な増加をしましたが、その余韻を保った状態です。
■古い個体は1例(SRS7327雄。1.0%)。
■翅の形に異常が見られる個体は0例。
■病気を持った個体は0例。
■小型の個体は9例見ました。
SRS6875雄、7008雄、7050雄、7067雄、7069雄、
7158雄、7199雄。7249雄。割合は2.2%です。
じわじわと増えている印象です。
■ヘアペンシルを出した雄は0例。
■翅色の黒さの強い個体は4例いました。1.0%。すべて雄です。
SRS6958雄、6880雄。
今日初めて、雌でも黒いと感ずる例を2例体験しました。
7039雌、7033雌です。雌雄併せて4例で、1.0%です。
今後これらを「クロ(黒)」と呼びます。
■「ストーカー」は1例。SRS6967雄。0.25%。
「ストーカー」の数が増えることは「成熟の兆候」の一つと考えていますが、
今年は非常に例が少ないままで推移しています。
■アサギマダラ同士が追いかけ合うのも成熟兆候の一つと考えていますが、
本日やっと2件ほどを見ました。
これまではクロヒカゲに追いかけられてばかりいました。
一昨日、1分以上もアサギマダラを追いかけていた
しつこいクロヒカゲを見ました。
追いかけていたアサギマダラが吸蜜のために花に止まっても、
なお、その周囲で飛び回っていました。
このような場面を見ると、
蝶の一頭一頭にも「個性」があることが分かります。
■翅の前後翅の白い領域の白さが特に明確で、コントラストの強い個体は3例。
今後、これを特に「シロ(白)」と呼びます。
■デコ平全域の頭数推定に関しては、
前日の8月25日の再捕獲は5例で、前日は426例を標識しましたので、
426×405/5=34506
が推定値になります。
■他の日に標識した個体の自己再捕獲の全体は以下の通りです。
8月24日:4例(300例標識)。
8月23日:1例(165例標識)。
8月22日:2例(163例標識)。
8月21日:0例(64例標識)。
8月20日:11例(605例標識)。8月19日:6例(511例標識)。
8月18日:5例(466例標識)。8月17日:5例(558例標識)。
8月16日:1例(446例標識)。8月15日:4例(461例標識)。
8月14日:1例(439例標識)。8月13日:5例(237例標識)。
8月12日:0例(185例標識)。8月11日:0例(91例標識)。
8月10日:0例(無標識)。8月9日:0例(34例標識)。
8月8日:0例(74例標識)。8月7日:0例(無標識)。
8月6日:1例(176例標識)。8月5日:0例(32例標識)。
■本日の再捕獲の総合計は51例でした。この51例という値と、
昨日の8月25日までの標識総数5471例の値を用いると、
推定頭数の概算は以下のように計算できます;
5471×405/51=約43446。
この推定値は前々日の約43000という値とほぼ同様です。
したがって、昨日のやや少ない値が、誤差による変動によるものと考えます。
■本日はゴマナで吸蜜しているアサギマダラを1頭撮影できました。
これは稀な例で、移動中のアサギマダラの場合に見る程度です。
ゴマナは今、筆者の背丈ほども伸びて、満開に近づいています。
アザミはデコ平の全域で開花の度を進めています。
それと比例して、ススキの穂も西大巓の山裾の方から、
燎原の火のように上方に広がりつつあります。
■今朝の段階での北塩原村近域の8月26日の予報は以下の通りでした:
降水確率は0%(~12時)、10%(12~18時)、10%(18~24時)。
天気は全体としては「晴れと曇り」と予想されており、
3時間ごとの予想ではすべて晴れでした。
結果は、その通り。
温度予想では、9時は18度で、最高は午後15時の22度でした。
結果は、9時はもっと寒く15度、最高はその通りでした。
明日8月27日の予報は降水確率10%で、
全体の予想は「曇りと晴れり」です、3時間ごとの予想では、
12時と15時だけ晴れで、他は曇りとなっています。
温度予想では、最高が24度で今日よりもやや温かくなる日になりそうです。
■アサギマダラの集まるヨツバヒヨドリは
赤茶色から、焦げ茶色になって来た場所が増えて来ました。
グランデコのヨツバヒヨドリは、長野県で見るものよりも、
秋口の赤さの度合いが強いのが特徴ではないかと思っています。
■ホテルの庭では、タムラソウがやっと満開になりました(遅い)。
ナガボノシロワレモコウも開花が遅れていたように思いましたが、
ようやく満開を過ぎる段階に来ました。
ノコギリソウの開花もピークを過ぎました。
ナナカマドはだいだい色の実が朱色に近づき、葉にも赤みが増して来ました。
ホウノキに巻き付いているツタウルシが美しい赤に染まり始めました。
カツラ(カツラ)の葉で枝毎真っ赤になっている株を見つけました。
オニシデの果穂は茶色の部分が増しています。
■ゴンドラから見ると、マタタビの葉の白い斑紋のピンク色の度が強くなっています。
ヤマウルシも一部の葉が赤くなり初めています。
ゲレンデでは明らかに色づき始めたカエデがあります。
成熟の遅いものも含めて、無理矢理秋に連れ込まれようとしています。
■グランデコホテルの日本レストランは日本庭園が見えるようになっていますが、
例年、大きなガラス窓に多くの蛾が夜の照明に惹かれて集まって来ます。
しかし、今年はその蛾がほとんど見られませんでした。
蛾以外の光に集まる昆虫も非常に少ないです。
今年の夏は日照時間が少なく、さらに温度も低い傾向でしたが、
その影響によるものか、蝶だけでなく、
昆虫全体の発生数が少ないことを推定させます。
■以上、グランデコ・アサギマダラ観察会・オフィシャルアドバイザー 栗田昌裕
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■筆者(栗田)が関わったアサギマダラの移動個体のリストおよび、
それらを日付順に追った時系列的な表は
筆者のHPの「2009年の移動調査記録」
の頁に表示してあります:
●2009年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
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■タテハチョウ科マダラチョウ亜科(以前はマダラチョウ科とすることもあった)アサギマダラ属アサギマダラ。学名Parantica sita 。英名Chestnut Tiger。
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■本ブログの総合的な画像目次や、ブログ内容を地域毎・テーマ毎にまとめた画像目次を下記のHPから見ることができます。
●SRS研究所の公式HP[SRS速読法・SRS能力開発法指導]
<参考HP>
●2009年アサギマダラ移動調査記録(SRS)
●グランデコ・デコ平・裏磐梯でのアサギマダラ・自然旅行体験(SRS研究所)
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
●3Dアサギマダラの世界(SRS)
●SRSアサギマダラ生態図鑑
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